今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2017年10月号
相続税への招待(1)
これまで、相続税申告が必要な人は亡くなった人の4%程度だったのですが、相続税の基礎控除削減後の実績では、8%とほぼ倍増しています。相続税は資産家の税だと思っていたのが、今や大衆課税となってきました。
1、3つの相続税対策からスタート
相続税対策といえば、まずどのような節税策があるのかでしょうが、もう1つ大事なことは、納税資金の準備です。以前、市内の大地主の相続税申告をしたことがあります。土地の評価額が20億円もあるのに、現金が1千万円程度しかなく、40歳の相続人の方は、これまでのサラリーマン生活を投げ捨てて、後の半生は所有不動産を処分しながら10億円近い相続税を支払うことに専念しなければならないと嘆いていました。
次の問題は、誰に、どの財産をどのように相続させるかという難問です。特に経営者の方は、事業や事業用の資産を誰にどのように引き継がせるかという事業承継の問題と、事業を承継しないほかの相続人に、何をどのように相続させるかを検討し、準備しておかないと相続税対策ならぬ争族対策になりかねません。
2、課税されるか、否か、それが問題だ
相続財産は、「相続税がかかる財産」「民法上は相続財産ではないが相続財産とみなされる財産」「課税対象外の資産」の3つの区分があります。
(1)相続税の対象となる資産
現金、預金、不動産、貸付金などの債権、有価証券、同族会社の株式、特許権、著作権、書画骨董、自動車、家財などが相続財産になります。また、生前における贈与税の110万円までの非課税贈与についても、相続開始日から3年前までの贈与額は相続財産として相続税の対象となります。
(2)みなし相続財産とはなにか
死亡保険金、死亡退職金は民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上は相続財産として課税対象とされます。ただし、法定相続人1人あたり500万円の控除があります。
(例)生命保険金・・5千万円
法定相続人・・配偶者、子1人の場合
5千万円ー(500万円x2名)=4千万円
相続財産とみなされる額は4千万円です。死亡退職金についても相続人1人あたり500万円控除後の残額が相続財産とされます。
(3)相続税が課税されない財産
祭具、墓、死亡弔慰金(業務上の死亡は給与の3年分、病死の場合は給与の6カ月分は相続税の対象外とされます)。また、相続税申告期限までに行った国、地方公共団体、特定公益財団への寄付なども相続税が課税されません。
3、相続財産のリストアップと評価
次のような「財産評価明細表」を毎年作成しておくと相続税の試算ができるほか、生前贈与などの参考資料としても活用できます。万が一の場合に、相続人が、どこに何があるか把握していないため慌てることがよくありますが、このような明細表があれば、余裕を持って手続きが進められます。次回は相続税の軽減策について検討を進めます。
財産評価明細書 ○年○月○日現在 | |||
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財産 | 所在 | 数量、内訳 | 評価額 |
預金 | ○○銀行 | 普通預金NO | ○○千円 |
株式 | ○○証券 | ○会社株式〇株 | ○○千円 |
保険 | ○○生命 | 保険NO | ○○千円 |
ゴルフ | ○○カントリー | ○○千円 | |
会員権 | |||
自宅敷地 | ○○平方メートル | ○○千円 | |
自宅家屋 | ○○平方メートル | ○○千円 | |
貸家敷地 | ○○平方メートル | ○○千円 | |
貸家 | ○○平方メートル | ○○千円 | |
資産合計 | ○○千円 | ||
負債 ○○銀行 | 住宅ローン | ○○千円 | |
差引正味財産 | ○○千円 |
※評価額は相続税法上の財産評価基準によります