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今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします

2015年8月号
給与はコストですか

人材不足の中、ベースアップや定期昇給の声が高まり、このままの給与水準で良いのか心配しています。

1.人は低い給与から高い給与に流れる

低成長時代には給与体系は単に、企業の支払い能力を土台に検討をすれば事足りたとも言えますが、これからは、人材をいかに確保するかを中心とした給与体系のあり方が問われます。単に給与が高いというだけではなく、社員のやる気を引き出し、企業の業績アップにも大きく貢献する制度の導入が必要だからです。

業績悪化企業の給与水準は同業他社や世間相場と比較して著しく低く、業績悪化の原因を高い給与水準に求める指摘が当てはまらないケースが目につきます。業績回復の中心的役割を担うべき人材は、とうの昔に転職し、残っている従業員は低賃金、低能率の中で戦意喪失状況にあるのが実態です。

2.こんな錯覚に陥っていませんか

①平等こそ平和を保つとする錯覚

先日、ある会社の給与体系の調査をいたしましたが、あぜんとしました。この会社の総数二百人の半数がパートさんですが、賃金水準は最低賃金で、さらに、年齢、勤続年数、経験などにまったく関係なく全ての人が同額です。平等といえば平等ですが、売上目標達成、能率向上などによる従業員さんへのインセンティブがまったく生じない、平和ボケ状況と言ったら言い過ぎでしょうか。

②月額給与は低めにして賞与でプラスすれば良いという錯覚

従業員さんの月々の生活は、給与を基準に考えているはずです。業績次第で金額が変動する賞与を生活の基盤に考える人がいるでしょうか。人材を獲得し、業績に寄与させるためには、世間相場の給与で、さらにその業界における平均的な給与水準を超える必要があります。高能率、高賃金こそ、給与体系の基本とすべきです。

③業績悪化を理由に定期昇給を一律に廃止するという錯覚

「業績も低迷しているのに定期昇給なんてとんでもない」という経営者の本音はわからないでもありませんが、給与水準そのものが大企業の七十パーセント程度に留まっている中小企業で、定期昇給を廃止することは考えものです。原材料費がどんどん上がっていく中でコスト削減は人件費しかないなどという経営者もいると聞いていますが、経営者失格です。定期昇給制度は生活を安定させ、仕事に専念してもらいたいという経営者からの意思表示です。生活費支出の統計資料などを勘案すると、六十歳くらいまでは定期昇給制度が必要だと考えられます。もちろん、一律、同額昇給ではなく、業績への貢献度に応じて差をつけることは当然です。

3.人件費は利益の源泉です

「良い成績をあげれば給料を上げるつもりだ」。よく聞く言葉ですが、世間並みの給与が支給されて初めてやる気が生じることも事実です。「自分たちが家族と団らんしている時間にも、寝ている間も暑い日も寒い日も、早朝から深夜まで一生懸命、働いている従業員のことを一時も忘れてはならない」あるタクシー会社の社長が後継者である長男を諭した言葉です。人件費は単なるコストではなく利益の源なのです。

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