今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2015年6月号
現場のことはパートさんに聞け
1 最前線はパートさんがになっている
優れた経営者の第一条件は、現場を知ることだと言われています。
しかし、今や被雇用者の四十パーセント弱がパートやアルバイトなどの非正規社員で、重要な販売や製造現場での最前線が、これらの非正規社員で占められているのが現状の経営環境です。
大部分の経営者は、このような実態を知りながら実際にはこれらの戦力を生かし切れていません。
最近、中小企業数社から同様の相談を受け、実態を確認するため、直接、従業員さんやパートさんに対してアンケート調査を実施しました。
改めてそこに経営改善のポイントが隠れていることを痛感させられました。
2 アンケート調査の実例から
- (1)経営者に対する要望
- ●いつも売上目標の達成を指示されているが、達成した時はせめて「大入り袋」くらい奮発してはどうか。言われるだけではやる気が起きない。
- ●社員である上司は有給休暇を取ったり、勤務時聞が終わると私たちに指示だけして、さっさと帰ってしまう。自分たちには有給休暇もないし、やむを得ない事情で早退しても給与がカットされる。
- ●六カ月に一回、面接があるが、何のための面接かわからない。何を言っても改善されたことがないし、改善できない理由も説明されない。
- ●ゴルフ帰りに売場を視察し、顧客さんがいるのに大声で小言を言って帰る。いつも「顧客さんが第一」と訓示しているが、口先だけだ。
- (2)取扱商品についての回答
- ●うちの商品は品質は良いが価格が高い。自分の給与では気軽に手が出せないのが悔しい。
- ●新製品が次から次へと出されるが、売場の自分たちには説明がなく、お客さんに質問されても答えられない。
- ●賞味期限切れが近づくと価格を下げて販売するが、時期が遅すぎて、結局廃棄してしまう。
- (3)製造部門との連携
- ●顧客さんからまとまった注文を受けたので、製造部門に確認したら、「自分たちは作るだけだから何も知らない」と言われた。在庫の種類や数量などは、社員の誰もが直ちに確認できるシステムを構築すべきだ。
- ●大型店舗内のテナント店は夜間九時まで働いているのに、営業や工場は六時に帰社してしまうため、顧客の大量予約注文を受けてもどうしたら良いのか返答できない。
- (4)工場の現場からの意見
- ●製造品目により、季節的に繁閑差がある。各部門の責任者が協力し、作業員を融通し合えば繁忙部門の残業が減ると思う。
- ●新製品発売時にそれに合わせた包装紙なども大量に製作される。製造中止後に失敗した新製品の包装資材が大量に放置されている。
3 利益は現場で発掘される
経営者が気付いていない多くの提案がパートさんから出されており、いずれも利益に直結する提案です。女性の活躍の機会が増え、そのための労働環境の整備も進められています。しかし、同時に経営者の視点からは、そのモチベーションアップや現場力をいかに利益に取り込むかが問われていると考えられます。