今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2016年10月号
相続税の仕組みを知る
相続税は相続発生時(亡くなった日)に所有していたその人の全ての財産額から負債を差し引き相続税対象額の計算をすることが始まりです。
原則は、仏壇仏具、お墓を除いた全ての財産を対象としています。さらに最も重要なポイントは、全ての財産は時価で評価するということです。評価方法は同税庁の「財産評価基本通達」で細かく決められており、相続税の作業全体の9割が評価に費やされると言っても過言ではありません。中小企業経営者に重要な評価ポイントの概略を説明しましょう。
(1)現金、預金
亡くなった日現在の残高が評価額です。
(2)上場会社株式
亡くなった日の時価が原則ですが、評価通達で評価方法が細かく定められています。
(3)同族会社株式、出資金
最大の難問は自社の株式、出資金の評価です。上場株式と異なり中小企業の株式などは自由に売買できるものではありませんが、相続税では時価評価を基本としており、不動産の含み益や利益の内部留保などが時価評価により表面化し、業歴の長い老舗や好業績の会社ほど評価額が高くなります。発行価額1株、500円の株式が相続時に1万円の時価と評価されたなどという事例も珍しくありません。これが中小企業の事業承継が困難な大きな原因と言われており、「経営承継円滑化法」などで贈与税や相続税の軽減措置も用意されていますが、煩雑な手続きのため、適用事例が限られているのが実情です。
(4)土地
国税局がホームページで公表している「路線価」によって評価します。この路線価は、毎年公表されている公示時価の20%を下回る程度を目途としていると言われています。しかし、相続した土地や長期間所有する土地などの含み益が表面化し、評価額が高くなります。このため、被相続人が居住していた住宅を相続人が引き続き移住することを条件とし、330㎡まで評価額を80%軽減する措置や、事業用建物などの敷地(賃貸用マンションなど敷地は除く)について400㎡まで80%軽減するなどの措置も講じられています。
(5)家屋
家屋の評価は固定資産税評価額です。
(6)貸付債権
中小企業でよくあるケースですが、役員が会社に貸し付けている貸付金や給与など未収金は全額相続税の対象となりますから要注意です。
(7)死亡退職金
役員の死亡退職金は法定相続人一人あたり500万円を控除し、控除後残高は相続財産に加算されます。
(8)死亡保険金
役貝保険など死亡保険金は法定相続人一人あたり500万円(保険金受取人以外の法定相続人数も控除対象数に入れる)を控除し、残額が相続財産に加えられます。死亡退職金や生命保険は相続税節税策として活用されていますのでご確認ください。
(9)家財など
相続税の対象資産に家財も入ると説明しましたが、通常、その人の居住用建物の固定資産税評価額の30%を評価額とする簡便法が利用されています。このように評価した財産から借入金など控除し、その残額からさらに前回説明した基礎控除額を差し引くと相続税の対象額となります。